当院の予防歯科では、唾液検査によるリスク診断から生活指導まで、様々なアプローチで虫歯予防を行っています。
また初期の虫歯には当院独自の再石灰化治療を、歯周病に関してはマイ・ハイジニストとして、患者さんごとに専任の担当歯科衛生士が定期的なメインテナンスに取り組んでいます。
歯を失う事と全身の健康と生活の質を守る事を目的とし、色々な治療を駆使した集学的な治療への取り組みに力を入れています。
「虫歯予防」と「予防歯科」は同じではありません。
歯を削る従来の治療の後、歯磨き指導とフッ素塗布を行うのが今までの虫歯予防です。
しかし、本来の予防歯科とはそのような区別がなく、治療そのものが予防であり、カリエスリスク(虫歯のなりやすさ)を下げ、歯の寿命を延ばすための治療と言えるでしょう。
もちろん、歯磨き指導やフッ素塗布など従来通りの予防も行います。
国内の虫歯治療の現状
左にある「国内虫歯罹患(虫歯に罹った)率」のグラフを見てみると、20歳以下のカリエスフリー(虫歯が1本も無い)率は良くなっていますが、20歳以上ではほとんど改善しておらず、逆に55歳以上ではカリエス罹患率は悪化しています。
ただし、高齢者の歯の保有率が向上したことも一因でしょう(歯がないと虫歯はゼロとなるため)。
そこで世界に目を向けると先進国ではDMFT(過去に虫歯になった歯の数)の減少は十分に目標を達成しており、FDI(国際歯科連盟)はGlobal Caries Initiative の中で、「2026年に生まれた子供には、生涯、虫歯を作らせないようにする。」という目標を打ち出しています。
虫歯が発生してから対応する今の医療では、そのような高い目標を達成することは不可能と言えるでしょう。もっと簡潔に言えば、求められる医療に今の制度が追い付いていないのです。
「木を見て森を見ず」という言葉があるが、歯科医療の現場では全くの逆で「森を見て木を見ず」であって、歯石や虫歯ばかりに注目し、直接的な原因である細菌に関してはブラッシング指導のみを行い対処してきたことが、このような現状を生み出していると言えるでしょう。
三上歯科が行う患者中心の虫歯マネジメント
当院では予防歯科というものを診療概念として考えています。
早期発見や口腔衛生管理といった予防ではなく、治療からすでに予防は始まっており、いろいろな情報と治療法をリンクさせた集学的な治療こそが予防歯科であると考え取り組んで来ました。
下の図はICDAS(虫歯の診断基準:アイシーダス)のPitts先生が提唱するカリエスマネジメントの図ですが、中心にある「統合」という言葉は「ICDAS Codeやエックス線診査コード、カリエスリスクなどから機械的に診断するのではなく、知識や臨床経験、患者さんと相談して、歯科医の頭で考えることが大事」という意味です。
これはまさに、当院が取り組んできた「予防歯科」と言えます。
従来の治療(早期発見・早期治療)では、歯の寿命は57年ぐらいです。
その為、当院で行う虫歯治療は、FDI(国際歯科連盟)提唱の「MI治療」(外科で例えるなら、開腹しない内視鏡手術のように生体へのダメージが極端に少ない治療)を実践しています。
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MI治療をもう少し具体的に説明しますと、例えば虫歯が歯と歯の間にできた虫歯(隣接面齲蝕)の場合、外からは虫歯が見えません。そのため、隣接面の虫歯を治療するには、健康な部分を削ってから虫歯の部分を除去していました。
結果的に治療という名のもと、実際の虫歯よりも数倍も大きな穴を作って埋めていたのです。
しかし、健康な部分を削ってまで治療をしても、平均6年以内に虫歯の再発や詰め物の脱落などの問題を生じることを考えると、虫歯の進行を薬剤などでコントロールし、治療時期を遅らせることが歯の寿命を伸ばすことに繋がります。
万一歯を削る場合でも、従来の方法の1/3~1/5ほどの削除量で治療することができます。このように、できる限り歯を削らず、治療効果を高める予防の考え方や治療のことを「MI治療」といいます。
皆さんのイメージでは、「虫歯」=「削って詰める」だと思います。
これを医科で例えれば、「胃潰瘍」=「胃の切除」になります。
これではたまりませんよね。
今までの歯科治療は、外科的(削る・切除)な手法のみでした。しかし最近では、キシリトールの登場以来、虫歯を科学するカリオロジーという学問の発展により、穴が開く前の虫歯の状態を初期虫歯といい、それに対する処置として再石灰化治療が確立されてきました。
外科に対する内科と同じように、薬で病気を治そうとする治療です。
外科治療は技術依存が強いですが、内科的治療は知識と経験が必要です。
皆さんがよく耳にした「C1・C2」などの診断は、歯を削るための診断であって、内科的治療を行うには「ICDASⅡ」で採用されている、より細かな診断と継続的なケアが必要になります。
当院では、虫歯で穴が開いてしまった場合でも、その虫歯の生じた歯やその場所、原因の考えられる要因や虫歯の状況に応じて、詰める方法や詰める物を変えて、最適な治療を行っています。
それぞれの治療法の長所には次のようなものがあります。
- 接着力が強い。
- 適度な弾力がある。
- フッ素が入っている。
- 抗菌力がある。
- プラークが付着しにくい。
これらの特徴を、状況に応じて使い分けています。
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ICDASⅡとは虫歯診断の新しい世界基準(ICDASⅠの改定版)で、いわゆる「見た目」の診査基準のことです。
これまでの虫歯治療では、「C1・C2・C3・C4」といった4段階の基準が使われてきました。というのも、虫歯は治るものではなく、見つけたらすぐに削って治すという、今まで行われてきた虫歯治療法に大きな原因があります。
しかし、初期の虫歯であれば再石灰化により回復が期待されることや進行が止まることが認識されている今、「経過観察」という処置も選択肢の一つとなりました。ICDASⅡにより、穴の開いていない経過観察の時点で「虫歯」と判断できることで、“削らずに治す”という治療法が適応できるのです。
本来であれば、この経過観察に時間を費やし、正確な判断が求められなければなりません。
ICDASⅡにより、今までの虫歯の評価法プラス“時間軸”が追加され、虫歯の状態を7段階に分けることで、歯の表面の状態を明確に表現することができるようになりました。さらに、エックス線診査においても6段階に分け区別することで、病状を正確に伝えることができるようになりました。
虫歯の診査表
【 コード0 】 健全な歯面 |
エナメル質形成不全等の発育障害、歯のフッ素症(褐色の斑点や染み)、歯の磨耗などのほか、外因性・内因性の着色は健全な歯面とみなします。 変色した裂溝(奥歯の溝)が複数あっても、着色を生じやすい習慣(お茶など)がある場合には健全と判断します。 |
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【 コード1 】 エナメル質における 目で見える初期変化 |
肉眼で見つけることができる最初期の虫歯の徴候を表します。 歯面をエアーで乾燥させ水分を取り除いた際に、不透明な箇所が見受けられる状態です。 |
【 コード2 】 エナメル質の顕著な変化 |
「コード1」からさらに進行し、歯面を乾燥させなくても不透明な箇所が目視できる状態。 虫歯によって褐色に変色し、裂溝も不自然なくぼみになっている。 |
【 コード3 】 エナメル質の崩壊 |
この段階になるとエナメル質の脱灰(リン酸やカルシウムイオンの溶出)が進み、表層の破壊が始まります。 裂溝にも脱灰が進み、不透明な白色、褐色の状態が観察できます。 |
【 コード4 】 象牙質に陰影がある |
象牙質の変色が健全なエナメル質を透過して、暗い陰影として観察できます。 しかし、エナメル質の内側からの陰影が観察されても、そこに虫歯がない場合は「コード4」とは記録しません。 |
【 コード5 】 虫歯により象牙質が 目で見える状態 |
虫歯が進行し象牙質が露出しています。 不透明(白色)さが増してエナメル質の変色により判断できます。 歯面の半分以下の虫歯です。 |
【 コード6 】 歯面の半分以上に 拡大した状態 |
少なくとも歯の半分の表面に象牙質が露出した状態。 歯質の明らかな喪失と、虫歯による穴を深くはっきりと観察することができます。 |
エックス線診査表
定期健診をしっかり行っていれば、虫歯になっても歯を削らずに経過観察で済むこともありますし、歯周病になっても初期の段階であれば、必要最小限の治療で済ますことができますから、結果的に痛みの少ない治療、歯を大切にする治療である「MI治療」が可能になります。
その反面、痛くなってから、状態が悪くなってから行う治療は、治療したその時は良くなったと思うかもしれませんが、長い目で見てみると決して良いことではありません。
積極的に「虫歯や歯周病になる前の定期健診」を行い、私たちと一緒にお口の健康を守っていきましょう!
患者さんに適した定期健診
虫歯と歯周病から歯を守るためには、毎日のお口のケアと定期的な歯科医院での健診が必要です。
当院では、治療が終わった後もその状態をより長く保つための定期管理を、患者さんのご希望やお口の状態に応じて行っております。
定期健診の流れ
【 STEP1 】 口腔内のチェック |
歯や歯肉、歯並びの状態を診ます。 |
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【 STEP2 】 精密検査 |
レントゲン撮影など、口腔内を細かく検査します。 |
【 STEP3 】 治療 |
必要があれば、虫歯や歯周病などを治療します。 |
【 STEP4 】 ブラッシングのチェック |
染め出しにより磨き残しをチェックします。 |
【 STEP5 】 歯のクリーニング |
バイオフィルム(歯垢・歯石)を除去し、歯面をキレイに磨き上げます。 |
【 STEP6 】 メインテナンス |
前回の定期健診から虫歯や歯周病が進行していないかチェックし、早期発見・早期治療を目指します。 |